迷宮都市にみる夢幻

~ヴェネチアン・グラスが誘うカーニバルの舞台~
カーニバルを表現したガラスの人形と
色鮮やかなヴェネチアン・グラスとの競演をお楽しみください。
 

迷宮都市にみる夢幻 ~ヴェネチアン・グラスが誘うカーニバルの舞台~
会期:2018年12月27日(木)から2019年4月8日(月)
※2019年1月15日から1月25日は休館とさせていただきます

写真:坪谷隆「希望」
写真:坪谷隆「希望」
バラ装飾脚ワイングラス (19世紀|ヴェネチア)

バラ装飾脚ワイングラス (19世紀|ヴェネチア)

水路と路地が入り組み、まるで迷宮のようなヴェネチア。そのヴェネチアをより幻想的に見せるカーニバル(謝肉祭)は、18世紀に絶頂期を迎え、今なお人々を魅了し続けています。
カーニバルは、ラテン語の「肉よ、さらば(carne vale)」に由来します。イエス・キリストの苦行に倣って節制する四旬節の前に行う歓楽と饗宴が許された期間で、ヴェネチアでは仮面をつけて仮装した人々が行き交い、街全体が一つの舞台のようになりました。カーニバルでは貴族は庶民に、庶民は貴族に扮し、男女が服装を入れ替えて起こる「秩序の逆転」は、冬と春の再生をも意味し、キリスト教以前の宗教の影響を色濃く残す祭りでもありました。
しかし、ナポレオンによりヴェネチア共和国が終焉を迎え、1797年にオーストリアの支配下に下るとカーニバルは禁止されます。約200年の沈黙を経て、1979年に公式行事として復活した後は、往時のままに舞踏会や演劇が催され、並び立つ昔日の衣装と現代の仮装が幻想的な空間を生み出しています。
その光景を撮り続けている人物が、坪谷隆氏です。ポートレートやテーマ写真等、幅広く活動している氏による現代カーニバルの写真作品は、冬のヨーロッパの厳しい寒さを凌駕する熱気を我々に伝えます。
本企画展では、カーニバルの時期に上演されたヴェネチア伝統の仮面劇「コメディア・デラルテ」の登場人物を表現したガラス人形等のガラス作品の他、約40点の坪谷氏の写真作品を通して、春の訪れを待つに相応しい本場ヴェネチアのカーニバルが持つ情熱と文化をご紹介致します。
 

主要展示作品のご紹介

マーブル・グラス・デカンター
(16~17世紀|ヴェネチア)

この作品は、マーブル(大理石)の模様をモチーフに作られました。様々な色が調和し、まるで本物の大理石のようです。また、この作品は、光を透かすと夕日のような美しい赤色に変化するため、カルセドーニオ(紅玉髄)とも呼ばれます。
花鳥装飾脚ゴブレット
(1870年頃|ヴェネチア|サルヴィアーティ工房)

サルヴィアーティ工房が1860年代末から70年代にかけて制作した鳥脚シリーズのゴブレットの1点。花縄の環の中に鳥が止まり、環の外側に華やかさを作り出すひれ飾りを施し、その下部には中空のバラスター・ステムを付けている。バラスターにも華やかさを添えるガラス熔着装飾をして、美しい装飾坏として仕上げている。
写真:坪谷隆「ヴィーナス誕生」

写真:坪谷隆「ヴィーナス誕生」

坪谷 隆が撮る
「華麗なるヴェネチア カーニバル」
ごあいさつ

水の都ヴェネチア。16世紀から変わらぬ街並みはその悠久のときを今に伝えています。毎年2月には、迷路のような街を彩るカーニバルが行なわれ、参加者は舞台の役者さながらに思い思いの衣装に身を包み、サン・マルコ広場に集います。
仮面やフェイスペインティングに隠されて、素顔をうかがい知ることはできませんが、大人だけでなく小さな子供からもこのカーニバルに参加する喜びと、熱気がカメラのファインダー越しに伝わってきました。
本場のヴェネチア カーニバルの空気、時間、そして情熱をこれらの写真を通して、日本の皆様にも感じ取って頂けましたら幸いです。
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
1949年 東京生まれ

学生時代より写真に興味を覚え卒業後、単身渡米New Yorkで(CFプロデュ-サー兼アートディレクター、写真家)のジョージ ナカノ、後にヴォーグ誌,ハーパースバザー誌、マリークレール誌等で活躍していた写真家のブルース ローレンスの両氏に師事。4年間のNewYork滞在後、1976年帰国。
翌年、月刊コマーシャルフォト誌(玄光社)の特集“若手海外体験派カメラマン”として表紙写真と体験記事が掲載された。後に大手アパレルメーカー、化粧品会社、雑誌広告等幅広い企業から撮影依頼をうけ現在にいたる。

即興仮面劇 コメディア・デラルテ

コメディア・デラルテとは、仮面を使った即興喜劇のことで、16世紀のイタリアで誕生し、現在のカーニヴァルでも街のいたる所で上演されています。
舞台上の役者たちは、召使いや老商人という風に登場人物の特徴を表した仮面や衣装を身につけ、筋書きをもとに即興で演技を行います。それと同時に、ジャグリングやパントマイム、さらには歌もこなすため、観客はいつの間にか舞台に夢中になってしまいます。
言語の壁を越えて演技を楽しむことができるコメディア・デラルテは、発祥地のイタリアだけでなく、18世紀にはヨーロッパ各地でも流行し、イギリスのシェイクスピアや、フランスのモリエールなど、後世の劇作家たちにも大きな影響を与えました。

“コメディア・デラルテ” 登場人物の性格・特徴

ブリゲッラ

緑で縁取られた白いスモックとパンツを着て、金銭欲を強調するオリーブグリーン色の仮面を着けています。世知に長けた策士で、ペテン師でもあります。一方、優れた音楽家でもあり、ギターを携えた姿で表されることもあります。
プルチネッラ

イタリア南部のナポリ出身の召使で、くちばしのような長い鼻のある仮面を着け、若い雄鶏のような容貌をしています。愚鈍と明敏、臆病と大胆と対立するどちらの性格にもなることが出来ます。哲学的で憂鬱な夢想家でもあります。
ドットーレ

名門大学のあるボローニャの出身です。博識のようにひけらかしてくる知識はほぼ嘘です。まれに良いことも言いますが、無知で傲慢な性格をしています。中身のない学習を意味する膨らんだ頬と丸い眼鏡をかけた仮面で表されます。
コロンビーナ

アルレッキーノのようにつぎはぎだらけの服を着て、白いエプロンを着けた姿で表される召使です。女性的な魅力で周囲を惹きつける一方、抜け目ない性格を求婚し続けるアルレッキーノに見抜かれてしまいます。
アルレッキーノ

継ぎ合わせた色鮮やかなまだら模様の衣装を着た道化師姿の召使です。額に瘤のある悪魔を表した黒い仮面を着けています。常に貧しく、空腹でいますが、持ち前の機知とユーモアで権力を持つ登場人物たちを笑い者にしていきます。

関連イベント

ヴェネチア仮面祭

会期:2018年12月27日から2019年4月8日
ヴェネチア仮面祭は世界三大カーニバルのひとつ、世界の人々が集まりいつもと違う自分を楽しみます。
箱根ガラスの森美術館では本場ヴェネチアで作られた仮面やマントを身につけて記念撮影などをお楽しみ頂けます。

ヴェネチア仮面作成工房

期間限定:2018年12月27日から2019年4月8日
世界に一つだけのオリジナル仮面
無地の仮面と模様をお選びいただきオリジナル仮面をお作りいただけます。

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