─奇跡のガラスを生んだ─
華麗なるバロヴィエール一族展

Exhibition of The Magnificent Barovier Family,Creators of Miraculous Glass
「風にそよぐグラス」や、日本初公開となるバロヴィエール家のコレクション等を展示いたします。

─奇跡のガラスを生んだ─ 華麗なるバロヴィエール一族展

会期:2018年4月28日(土)から2018年11月25日(日)まで
ガラス職人の一族バロヴィエール家は、15世紀に世界初の透明ガラスを発明したアンジェロから、19世紀に糸のように細い脚で自立するガラスの制作に成功したジュゼッペに至るまで、常にガラスの可能性に挑戦しヴェネチアン・グラスの発展に深く関わってきました。
本展では、バロヴィエール家の名工達が発明した数々の技法を紹介するとともに、世界でも現存数の少ない「風にそよぐグラス」や、日本初公開となるバロヴィエール家のコレクションを含め約80点を展示し、バロヴィエール一族の探究心に迫ります。
1920年頃のバロヴィエール工房
1920年頃のバロヴィエール工房

1章 ヴェネチアン・グラスの復活とバロヴィエール家

19世紀、文化や技術を学ぶための舞台として美術館設立ブームが到来すると、各地で展示資料が不足したため、全盛期のヴェネチアン・グラスの複製品制作への需要が高まりました。この機運は、1797年ヴェネチア共和国崩壊の影響で衰退したガラス業界に、技術研究の機会をもたらし、ヴェネチアン・グラスを復活へと導くことになりました。
ジョバンニやジュゼッペをはじめとするバロヴィエール家の職人たちは、1859年からガラス作品の復刻を勢力的に行っていた弁護士のアントニオ・サルヴィアーティの工房で、作品の制作を手掛け始めました。
1893年に描かれた「ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像」には、ジュゼッペが作品のデッサンをしている様子が描かれています。卓越したガラス制作技術のみならず、優れた彼のデザインが、古代から黄金時代のヴェネチアン・グラスに至るまで、サルヴィアーティ工房の豊富な商品ラインナップを創り出しました。バロヴィエール家の職人たちの活躍により、サルヴィアーティ工房の作品は各地の展覧会に出品されたり、新聞記事で紹介されたりする程、人々から大きな称賛を浴びることとなりました。
サルヴィアーティから工房を引き継いだバロヴィエール家は、1890年に「アルティスティ・バロヴィエール」と工房名を変更しました。熟練した職人達の技と、豊富な作品デザインを併せ持ったバロヴィエール工房は、その後も画家や彫刻家など他分野のデザイナーとも共同制作を行い、新たなガラス作品に挑戦していきます。
ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像

ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像

1893年
ルイージ・ガスパリーニ作

グッゲンハイム坏

1875年
ジュゼッペ・バロヴィエール

ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像 部分

 肖像に描かれたモザイク・グラス坏
 

モザイク・グラス坏

1880~1900年
ジュゼッペ・バロヴィエール
ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像 部分

ジュゼッペ・バロヴィエールの肖像 部分

肖像に描かれた装飾脚ゴブレット
 

装飾脚ゴブレット

1876年頃もしくは1890~92頃
推定ジュゼッペ・バロヴィエール

ジュゼッペ・バロヴィエールのデザイン画と多彩なガラス作品

ジュゼッペ・バロヴィエールのデザイン画からは、それまでの伝統的な器の形体を取り入れつつ、脚部などに龍、ドルフィン、白鳥、草花といった様々な装飾を大胆に組み合わせたり、表面の稜線模様など装飾の細部に至るまで指示をしていることが読み取れます。
その一方で作品を見ると、これらのデザインが忠実に作られていて、職人たちが熟練の技によって生み出した熔着技法や色彩表現によってジュゼッペのデザインに応えているのが分かります。
このようなジュゼッペの豊かなデザインやガラス職人たちの技術研究の源となったのは、修道士のヴィンチェンツォ・ザネッティが設立したムラーノ・ガラス美術館やガラス職人のためのガラス学校でした。
彼らは美術館の収蔵品や資料などを手本に、その形体や技法を研究し、全盛期のヴェネチアン・グラスを見事に復刻しただけではなく、それまで用いられなかった色彩や装飾で、使うよりも見て楽しめるような華やかな作品を生み出し、ヴェネチアン・グラスを復活に導いていきました。

双頭龍装飾水差

19世紀
デザイン:ジュゼッペ・バロヴィエール
 

龍装飾水差

19世紀
デザイン:ジュゼッペ・バロヴィエール

花装飾脚蓋付ゴブレット

1866~1872頃もしくは1878年頃
デザイン:ジュゼッペ・バロヴィエール
 

装飾水差

19世紀
デザイン:ジュゼッペ・バロヴィエール

「風にそよぐグラス」シリーズ

第1回ヴェネチア・ビエンナーレが開かれた1895年、工芸作品部門の催しとして、ムラーノ島の公会堂大広間とガラス美術館で「ムラーノとヴェネチアの選抜芸術ガラス作品と関連作品展」が開催されました。
展覧会では、過去のガラス作品の複製が数多く出品される中、アルティスティ・バロヴィエール工房が “幾つかの現代的な作品”として出品した、他に類を見ないほど脚が細く、風にそよぐほど軽やかなグラスが、ひと際人々の関心を惹きつけました。
他国では当時、アール・ヌーヴォーの影響を受けたガラス作品が流行しており、ドイツのカール・ケッピングやフリードリッヒ・ツィツマンなどはバーナーワークによって、草花を思わせる繊細な脚のゴブレットを制作しました。しかし、ジュゼッペ・バロヴィエールは、バーナーワークよりも難易度が高い、吹きガラス技法と熟練の技を用いて、同様の作品を制作することに成功し、以後「風にそよぐグラス」はシリーズ作品としてアルティスティ・バロヴィエール工房で作られることになります。
風にそよぐグラス
1895年
アルティスティ・バロヴィエール工房 ジュゼッペ・バロヴィエール
 

2章 エルコレ・バロヴィエールの新たなガラス表現への挑戦

エルコレ[手前]ニコロ[奥]バロヴィエール兄弟

エルコレ[手前]ニコロ[奥]バロヴィエール兄弟

1919年、アルティスティ・バロヴィエール工房に入ったエルコレは、父親のベンヴェヌートや叔父のジュゼッペたちのガラス技術を吸収し、指導的デザイナーとして新たなガラス表現の研究を行いました。
その研究成果は、1929年の「プリマヴェーラ(春)」と呼ばれる、白みを帯び、細かい筋目のクラッキングの入ったガラスシリーズや、1935年の「加熱半熔融熱彩色」という新たな技法の発明につながります。
「加熱半熔融熱彩色」の完全に熔融していないガラス成分が生み出す独特の色彩効果や、それまでのヴェネチアン・グラスの特徴であった繊細さや装飾性とは真逆の、どっしりとした形体とシンプルなデザインは、時代の要望と合致して人々に称賛されました。
また、「テッセレ・アンブラ(琥珀を織る)」をはじめとするモザイク・グラスは、伝統技術を生かしながらも、ガラスパーツを大胆に使用した作品に仕上げられています。こうした新しい表現はアート・グラス作品として、現在のヴェネチアン・グラスにも大きな影響を与えています。
バロヴィエール工房は幾度かの工房名の変更を経ながらも、一族が受け継いだものを基に絶え間ない技術研究を行い、時代の変化に応じた作品を生み出すガラス工房として時代をリードしていきました。
 

「ガラス・テクスチャー」シリーズ

テッセレ・アンブレラ(琥珀を織る)1962年
バロヴィエール&トーゾ社
デザイン:エルコレ・バロヴィエール
 

「レンティ」シリーズ

ア・ステレ(星文) 1942年
バロヴィエール&トーゾ社
デザイン:エルコレ・バロヴィエール

3章 ヴェネチアン・グラスの礎を築いた父アンジェロと娘マリア・バロヴィエール

今ではガラスの一般的なイメージとなった無色透明なガラス。しかし、高水準の透明ガラスが生み出されたのは、15世紀中頃のヴェネチアであったと伝えられています。アンジェロ・バロヴィエールは、哲学者で錬金術に携わっていたパオロ・ダ・ペルゴラの下で、ガラスの成分を研究し、透明なガラスの中でも、より純度の高い「クリスタッロ」(水晶を意味するイタリア語)と呼ばれるガラスを生み出しました。
さらに現在「カルチェドーニオ」として知られている、波状のマーブル模様で縞瑪瑙や、紅玉髄を表現したガラスも、アンジェロが発明したものと考えられています。彼の工房では、その他、中国、明朝の磁器を再現した「ラッティモ」と呼ばれる乳白色ガラスの制作まで行われており、当時からガラスの様々な着色法や色彩の研究が進められていました。
また、アンジェロの娘のマリアも、自身の小窯で何層も色ガラスを重ねて、断面が「ロゼッタ(バラの花)」模様で、ビーズなどに使用されるガラス棒を発明した人物と言われています。当時、色ガラスを重ねると割れる可能性が高く、ロゼッタ模様のようなガラスの制作は技術的に難しいとされていました。しかし、マリアはアンジェロからガラスの製造法を引き継いでいたため、多色ガラスの組み合わせを成功させることができたと考えられます。
アンジェロやマリアの発明や研究はヴェネチアン・グラスの礎となり、その後の約3万色とも言われる色彩表現や、透明なガラスと乳白色ガラスを捻じり合せて作られる繊細優美なレース・グラス技法の発明につながり、豊かな装飾に彩られたヴェネチアン・グラスの黄金時代を築き上げました。

 

格子文コンポート

16世紀前半
 

点彩扁瓶

16世紀

アヴェンチュリン・マーブル・グラス碗

17世紀後半~18世紀初頭
 

ロゼッタ・ビーズのネックレス

15世紀後半~16世紀初頭
主催 ヴェネチア市立美術館総局、箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援 イタリア大使館、イタリア文化会館、箱根町
協力 ムラーノ・ガラス美術館、一般財団法人箱根町観光協会、小田急グループ、ガラス史家 ローザ・バロヴィエール・メンタスティ、ビーズ・コレクター オーガスト・パニーニ

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