箱根ガラスの森美術館 2024年 特別企画展

香りの装い

~香水瓶をめぐる軌跡~

Fragrances in Different Guises : The Trail of Perfume Bottles
 

水晶や瑪瑙、ガラスで制作された香水瓶など約80点を展示
会期:2024年7月19日(金)から2025年1月13日(祝・月)まで

香りは古来においては神への捧げものとして、中世からルネサンスにかけては病気から身を守る薬や魔除けとして、そして現代ではファッションとして、時代とともにその役割を変えていきました。そして、香りは時代の移り変わりとともに、天然石や陶磁器、ガラスといった様々な香水瓶という「衣装」に姿を託し、往時の栄華を今に伝えています。

本展では、3000 年以上の時を経て人と香りが歩んだ軌跡をめぐります。時代を彩る3人の貴婦人たちが愛した香りとともに、水晶や瑪瑙などで制作された香水瓶や、神話や愛などの寓意を込めた香水瓶、ファッションとして香りのイメージをデザインした19世紀末以降の香水瓶など、様々な香りの器の世界をご紹介いたします。ぜひ、往時の人々の想いが込められた「香りの装い」をお楽しみください。

1章 貴婦人と香りの広がり

ヴェネチアでは11世紀以降、イスラム世界から貿易を通して貴重な香料がもたらされ、ルネサンス期になると香水をはじめ、石鹸、化粧品が普及しました。この流行はイタリア各都市の宮廷にも広がり、フィレンツェでは数多くの香水工房が誕生します。
イタリアの香水をフランスに伝えたのは、メディチ家のカテリーナ・ディ・メディチ(1519‐1589)。フランス王アンリ2世に嫁いだ際、ムスクなどを用いた香水レシピをフランスに伝えたと言われています。以後、温暖な南フランスのグラースでは、香り豊かな花々から多数の香水が誕生。宮廷文化をリードしたポンパドゥール夫人(1721‐1764)やマリー・アントワネット(1755‐1793)により、フランスで香水文化が華開きました。
貴重な天然香料から生み出された高価な香水は、宝飾細工や繊細なヴェネチアン・グラス、ヨーロッパで製造が始まったばかりの磁器製の香水瓶など贅を凝らした香水瓶に収められ、貴婦人たちは香りに満たされた至福の時間を享受しました。

犬を抱く少年像香水瓶
1745~50年頃 ドイツ マイセン窯 

 

香水瓶セット
1870年頃 フランス
海の見える杜美術館収蔵

香水瓶
1890年頃 ロシア サンクトペテルブルク ファベルジェ社
海の見える杜美術館収蔵

 
瑪瑙香水瓶
18世紀後半 ロシア
馬車形香水瓶
1860年頃 イタリア
ブロンズ枠付き香水セット
19世紀中頃 フランス

2章 いにしえの香り

古代メソポタミアの地から出土した3000年以上前の最古のガラス器は、香油を入れるためのものだったと考えられ、その頃には既に人と香りの関係が始まっていたことがわかります。古代メソポタミアやエジプトでは、香りは神聖なものとされ、豊かな香りを放つ樹脂や香木を焚き、その香りは煙とともに神へ捧げられました。また、これらの香りを油に移した香膏(こうこう)や香油は、アラバスターやガラス製の容器に収められ、富裕な人々の間で、客人のもてなしなどに使用されました。絶世の美女と謡われたエジプト最後の女王、クレオパトラ(B.C.69‐B.C.30)はバラの香りを愛し、その魅惑的な香りと数か国語を巧みに操る才覚で、時の権力者たちを魅了したと言われています。
また聖書においても香料や芳香物についての話がしばしば登場します。なかでも新約聖書には、キリストの誕生を知った三人の博士たちがそれぞれ黄金、乳香、没薬を携え、星の導きで東方より礼拝に訪れた話が記されています。乳香や没薬はカンラン科の樹木から採れる樹脂性の香料で、当時は黄金に匹敵するほどの価値があったと言われています。

黒絵式香油壺
紀元前6世紀 ギリシャ
 
コア・グラス双耳香油瓶
紀元前2~前1世紀 東地中海沿岸域
長頸瓶
1世紀 東地中海沿岸域
人頭瓶
1世紀 東地中海沿岸域

3章 東方からの香り

西ローマ帝国の滅亡(467年)後、ヨーロッパには長らく暗黒時代が訪れました。一方古代ギリシア・ローマの文化、技術を引き継いだイスラム世界は、西はモロッコから東は中央アジアまで、その勢力圏を急速に拡大。その結果、人やモノをはじめ様々な知識が集中し、ガラス製造をはじめ、アルコールや香りの蒸留に関する技術が発達。領土各地で産出された香辛料や香料が流通していました。
なかでもイスラム世界の人々が好んだ香りに、バラとムスク(麝香)があります。バラの香りを移した水(バラ水)を口の細い瓶から床に撒いたり、客人に振りかけたりなど、芳しい香りでもてなしたと言われています。
この優雅な香りの文化は、ビザンチン帝国皇女テオドラ・デュカス(1058‐1083)と第31代ドージェ(提督)ドメニカ・セルヴォの婚礼でヴェネチアにもたらされます。香りの文化は瞬く間にヨーロッパ中に広がり、数多くの香料やバラ水が東方から輸入されました。また7回に及ぶ十字軍の遠征は、人々の関心を東方世界に向かせ、医学、薬学、香りの製造法などの知識がヨーロッパに広まり、ルネサンス時代の到来につながりました。

点彩花文蓋付ゴブレット
1500年頃 ヴェネチア
 
薔薇水撒水瓶
18~19世紀 ペルシャ
グース・ネック形薔薇水撒水瓶
18~19世紀 ペルシャ
 
点彩扁瓶
16世紀 ヴェネチア
薔薇水撒水瓶
17~18世紀 スペイン
ポマンダー
1630年頃 ドイツ
海の見える杜美術館収蔵

4章 新たな時代の香り

19世紀後半から20世紀初頭は、まさに新たな香水の始まりの時代でした。それまで天然香料から生み出されていた香水が、科学技術の発達による合成香料の誕生と、大量生産が可能になったことにより、王侯貴族の世界から市民社会に広く開放されるようになりました。

香水メーカーは、流行に合わせて新たな香りを次々に開発し、イメージに沿った香水瓶をデザイナーに発注。ラベルや箱、広告展開に至るまでブランド戦略を練り、香水分野は、ファッション業界の一大産業に発展していきます。

特に気密性が高く大量生産が可能なガラス製香水瓶の需要は高く、フランスを代表するガラスメーカーのバカラ社をはじめ、エミール・ガレやドーム兄弟が芸術性の高い香水瓶を手がけました。特に宝飾デザイナーであったルネ・ラリックは、アール・ヌーヴォーやアール・デコといった時代の流行を取り入れるだけでなく、デザイン性の高い香水瓶を多数生み出し、香水とそのメーカーブランドの価値をさらに高めていきました。

ミルフィオリ・グラス・ランプ
1910年頃 ヴェネチア
アルティスティ・バロヴィエール工房
 
女神天使文香水瓶
18世紀後半 イギリス
ウェッジウッド
高砂コレクション® 
カメオ・グラス朝顔文香水瓶
1887年頃 イギリス
トーマス・ウェッブ&サンズ社
花文香水瓶
20世紀初頭 デンマーク
ロイヤルコペンハーゲン
高砂コレクション® 
 
月光色エナメル彩香水瓶
1890年頃 フランス
エミール・ガレ
「リンゴの花咲く木」香水瓶
1919年 フランス
ルネ・ラリック
ラスター彩香水瓶
1924年頃 ボヘミア
レッツ工房
 

貴婦人の香り付き入館チケット

7月19日(金)より、特別企画展限定マリー・アントワネットが愛した香り付きの入館チケットを配布いたします。

特別企画展音声ガイド
お手持ちのスマートフォンから、QRコードを会場で読み込んで頂くと、展示作品の解説を聞くことが出来ます。(無料サービス)
独自アプリ等のインストールは不要です。普段使用されているブラウザでご利用いただけます。
※展示会場内ではイヤホンのご使用、またはスマートフォンのボリュームを下げてご利用ください。
会期 2024年7月19日(金)から2025年1月13日(祝・月)まで (会期中無休)
時間 午前10時~午後5時30分(入館は閉館の30分前まで)
会場 箱根ガラスの森美術館
主催 箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援 箱根町
協力 箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力 海の見える杜美術館、高砂香料工業株式会社
入館料 一般1,800円 高大生1,300円 小中生600円(税込)

※開催期間、出品作品等が変更される場合がございます。


Online tickets

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