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バーリの聖ニコラウス文聖水瓶
(16世紀│ヴェネチア)

胴部両側にガラスのリボン装飾が付けられた聖水容器。表側にはサンタクロースのモデルである聖ニコラウスが司祭服姿で描かれています。聖ニコラウスは四世紀のトルコで司教を務めていた人物で、様々な伝説が残されています。なかでも、三人の貧しい娘を身売りから救うため、お金の入った袋を窓から家に投げ入れた話は広く知られており、その慈愛に満ちた姿から、子供たちにクリスマスプレゼントを届けるサンタクロースへと変化しました。

『サンタクロース』
クリスマスの象徴として世界中の子供達に夢を与える存在、サンタクロース。
サンタクロースのモデルは、四世紀にトルコのミュラという町(現在のデムレ)で司教を務めていた聖ニコラウスという人物であるとされています。では、なぜ司教であった彼が、子供達にクリスマス・プレゼントを届ける優しいおじいさんへ姿を変えたのでしょうか。聖ニコラウスにまつわる次のような逸話が残されています。
ある時、生活のために三人の娘たちを身売りに出さなければならない家族がいる事を知ったニコラウスは、夜、その家の窓からお金の入った袋をこっそり投げ入れます。一家は、そのお金の中から持参金を出し、娘たちを結婚させてあげることができました。また、投げ入れたお金の袋が、偶然、窓際に干していた靴下に入ったことから、靴下を吊り下げてサンタクロースのプレゼントを待つようになったと言われています。
このような慈愛に満ちた姿から、聖ニコラウスは、子供の守護聖人とされ、聖ニコラウスの祝日である12月6日には、子供達へプレゼントを贈る習慣ができました。そして、17世紀初頭に新天地アメリカへ渡ったオランダ人により、その習慣も伝わり、子供達にプレゼントを届けるおじいさんが誕生しました。その際に、オランダ語で聖ニコラウスを表す「シンタークラース」がなまって、「サンタクロース」に変化したとされています。

風にそよぐグラス
(1895年│ヴェネチア│アルティスティ・バロヴィエール工房│ジュゼッペ・バロヴィエール制作)

名工ジュゼッペ・バロヴィエールによって実験的に作られたグラスで、19世紀末にヨーロッパで大流行した「アール・ヌーヴォー様式」を採り入られた作品です。植物の茎をイメージした細くて長い脚部の上に頭の大きな坏身が熔着され、わずかな風にも揺れ動きます。1895年に開催された第1回ヴェネチア・ビエンナーレと共に開催された展覧会に出品され、ガラス工芸の常識を破る驚異の技術を駆使した奇跡のグラスとして、大きな注目を集めました。

「風にそよぐグラス」シリーズは、ジュゼッペ・バロヴィエールにより1895年頃に数点実験的に制作されました。

ミルフィオリ・グラス・ランプ
(1910年頃│ヴェネチア│フラテッリ・トーゾ工房)

古代のモザイク・グラスの技法を応用して作られたランプ。一面に花が敷きつけられたかのような模様から、イタリア語で千の花を意味する「ミルフィオリ」とも呼ばれています。この作品は、花柄のガラス片を一枚の板状に熔着した後、小量のガラス種に巻きとって、ヴェネチアン・グラスならではの宙吹き技法によって成形されています。

花装飾脚オパールセント・グラス・ゴブレット
(1880年頃│ヴェネチア│サルヴィアーティ工房│デザイン:ジュゼッペ・バロヴィエール)

ヴェネチアン・グラスの伝統を踏襲しつつ、新しい時代に合ったデザインを取り入れたサルヴィアーティ工房によって制作された大型のゴブレット。青みをおびた半透明乳白色のオパールセント・グラスを使い、幻想的な美しさをもつ作品に仕上げられています。

ダイヤモンド・ポイント彫り ヴァンジェリスティ家紋章文コンポート
(16世紀末~17世紀初|ヴェネチア)
宙拭き、熔着装飾、ダイヤモンド・ポイント彫り

この作品は、ダイヤモンド・ポイント彫りの代表的な一例で、草花文様とヴェローナのヴァンジェリスティ家の紋が彫刻されています。 大きなコンポートの皿部は、ほぼ水平に作られ、縁がわずかに反りその中央には青色のガラスの鎖と、それに沿って内側と外側に透明なガラスが、円環状に熔着装飾されています。この種のコンポートは、ダイヤモンド・ポイント彫りのほかにエナメル彩を施した作品も数多く残されています。

レース・グラス蓋付ゴブレット
(16世紀末~17世紀初|ヴェネチア)
宙吹き、レース・グラス、熔着装飾

レース・グラスの模様を崩さずに仕上げるためには高度な熟練技術を要する。このゴブレットの模様は、少しの乱れもない。美しく優しい曲線の器形とともに、レースのコスチュームをまとった優雅な貴婦人のイメージをたたえた作品である。15~16世紀に世界的な名声を馳せ、ヨーロッパ貴族の憧れの的となっていたヴェネチアン・レースを、無色透明のガラスの中に封じ込められないものかと、ムラーノ島のガラス職人たちは技巧の限りを尽くして、レース・グラスの創作に取り組んでいた。そして16世紀中頃、遂にその方法を見つけだし、門外不出の秘法として守られる事になった。

点彩花文蓋付ゴブレット
(1500年頃|ヴェネチア)
型モール、宙吹き上げ、エナメル彩、金彩
高32.5cm 口径12.1cm

濃紺の透明なガラス素地に、赤・白・緑・青色の不透明のエナメル顔料を使った点彩技法で、花文や点綴文様を坏身全体に装飾し、その背景を金泥で覆い尽くして、豪華絢爛たるルネサンス意匠に作り上げている。
脚台部や蓋には、型によって吹き出した縦の稜線が重厚な格調を作り出しており、コバルト・ブルーを素地にした金梨地がその風格を一層高めている。
ビザンチン時代に作られていた黄金七宝製の聖餐坏の形式を採用して、ラッパ状に開いた脚台部と坏身との間には、大小2つの玉飾りが玉房状に作り付けられており、そこにも縦稜と金泥の装飾が施されている。
蓋は天蓋を思わせるように中央が高く立ち上がり、その上に玉状の紐を付け、その上に無色の2段の玉飾紐を熔着している。蓋には12稜縁の鍔と、その内側下部に落し込みの合わせ部分を付けている。
典型的なビザンチンの聖餐坏の形式を採用しながら、点彩と金泥の焼付装飾には、イスラム・グラスの意匠と技法を導入している。15~16世紀ヴェネチアが、地中海文化の混淆と熟成を成し遂げていた状況がみごとにこのゴブレットに表されている。
なお、この作品は永くイタリア貴族の館に伝世されたあと、ドイツの銀行家ロスチャイルド家に伝えられていたものである。

ガラスの泉 LA FONTANA DI VETRO

ガラスの泉 LA FONTANA DI VETRO
(1996年|池原義郎・リヴィオ・セグーゾ)

「ガラスの泉」の中央にある作品「ナシタ」は生命の誕生というテーマを持つ、開きかかった透明の殻と内部の楕円形のフォルムによって構成されています。
この作品は、ヴェネチアを代表するガラス作家であるリヴィオ・セグーゾ氏が制作し、当美術館の設計者である池原義郎氏による大理石の噴水上に設置するという形で共同制作されたものです。

CONTADINO(農夫)
(1954年|Mマルク・シャガール デザイン/エジディオ・コスタンティーニ作)

E.コスタンチーニが、1950年代中頃より、ヨーロッパの巨匠たちに呼びかけて、ガラス彫刻の制作を行ったうちの1点で、「風景」シリーズの「CONTADINO」である。シャガールのデッサンに基づいて、コスタンチーニが、技法やどの色のガラスを使用するか等を決め、シャガールの絵画的特質を生かした透明感のあるガラス作品として制作している。デザインに基づいて、鋳型を作り、その上に色ガラスパウダーで着彩して、熔解ガラスを流し込むというキャスティング技法によって、レリーフ平板状の作品として完成させている。また、サインには、この企画を推進したフチーナ・デリ・アンジェリ画廊のサインと、E.コスタンチーニのサインが入れられているのが、マルク・シャガールのサインはない。

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箱根ガラスの森美術館は、緑豊かな箱根仙石原にあるヴェネチアン・グラス専門の美術館です。

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